ボイストレーニングで基礎中の基礎となるのが、「口を大きくあける」ことです。
小学校などの音楽の授業で先生から「口をあけて!」と言われた人も多いのではないでしょうか。
レッスンでも口の開きが小さい、またはほとんど開いていない人が非常に多いです。
口を動かすことに慣れていない人は「こんなに動かすの⁉︎」と驚きますが、
意識して大きく動かすことで声は劇的に変化していきます。
この記事では、その「口を大きく開ける理由」についてご紹介します。
この記事の概要
日本人は顔の筋肉を動かさない習慣がある?
顔の筋肉は日常生活において、「話す」行為でよく使われますが
なんと、「日本語は表情筋をあまり使わない言語」だそうです。そもそも動かさない習慣がついてしまっているかもしれません。
上記のサイトによると、ドイツ語は表情筋を全体の80%、英語は60%使うのに対し、日本語は20%程度とのこと。
たしかに、外国語はくちびる周りを前後、上下に活発に動かし、立体的に使いますが、
日本語はほぼ平面的にしか動かしません。
それもそのはず、外国語は一つの母音の中にも
明るい、暗い、開いている、閉じている
などの音の色がさまざまありますが、
日本語は「あいうえお」の5種類だけと少ないため、口を開けなくても話せてしまいます。
日本語しか話さない人も多いこの国では、表情筋を使わない習慣がつきやすいと言えます。
普段から声が小さい人は特に意識して動かしていきましょう。
歌う時に口を開くメリット
歌うときに、口を開くことで得られる3つのメリットを紹介します。
メリット①言葉の形がはっきりするので、歌詞が聞き取りやすくなる
普段の会話では、多少言葉の形が曖昧でも相手に伝わります。
それは、「聞き手が頭の中で文脈から言葉を推測して言葉を認識している」からです。
しかし、歌においては言葉にリズム、音がつくため、聞き取りにくくなるほか、
バックサウンドが大音量であればさらに困難になります。
口を大きく動かすと言葉の形がはっきりするので、聞き手は歌詞が聴き取りやすくなります。
歌は歌詞を伝えることもとても大切です。聞き手が聞き取りやすい歌を目指しましょう。
メリット②顎の脱力ができている証拠
大きく動かせることは脱力できている証拠でもあります。
こぶしを強く握ると手首が動かしにくくなるように、顎に力が入っていると口が動かしにくくなります。
発声において筋肉の脱力は響きを生むために重要であり、特に高音発声は苦しくなりがちなので意識しなければなりません。
「脱力している」→「筋肉がだらーとして動かない」
これは身体を寝かせている時には正しいですが、動きがある中では正しくありません。
筋肉が動いている中では
自由に柔らかく動く=力が抜けている
だと考えましょう。
メリット③声量のアップにつながる。
口を大きく開いた方が声がこもりにくく、声量も上がります。
メガホンを想像してみてください。小さい入り口から声を入れると声が拡声されます。
しかし、反対に大きい方から声を入れても声がこもってしまうと思います。
なるべく声の出口を大きくしてあげましょう。

口を開くときには“縦方向”
口を大きく開けるといっても、ハンバーガーにかぶりつくような開け方では顎関節に力が入ってしまいます。
口を開くときには顎の動きが縦方向になるように意識しましょう。
口を横に大きく開こうとすると、「下顎を後ろに引く」動きが生まれやすくなります。この後ろに引く動きは首回りの力みに繋がってしまうので気をつけましょう。
どのくらい開けばいいの?
口は開けるだけ開けば良いというものではありません。限界近く開けようとするとかえって力が入ってしまうからです。
口を開くとある程度のところまでは楽に開けますが、それ以上開こうとすると首の前側と顎関節に力みが走ってしまいます。それ以上は開かないようにしましょう。(自分の縦に開ける7割くらいが目安です。)
まとめ
- 口を動かすと言葉の形がはっきりし、歌詞が聴き取りやすくなる
- 口を大きく動かせることは脱力できている証である
- 口を開けることで声量アップにつながる
- 口は顎の動きが縦方向になるように意識して開く
- 口は開け過ぎないように楽に動ける範囲で大きく動かす
口の開きは基礎中の基礎ですが、習慣にないと直すのが難しいところでもあります。
無意識にでもできるように、毎回歌う際には意識してみてください。

